■2021.7.15
災害の度に登場する「災害救助犬」を考える
■災害救助犬って
不特定な生存者を探すための訓練をしているのが災害救助犬です。原臭(探す目的と同じ臭いのもの)を必要とせず人の臭い(細胞片、体臭。呼気等)に反応を示すように訓練されています。嗅覚がいい!これは災害救助犬に限らず犬ならば同じ能力ですが、それぞれの使役犬はこの特性を生かし優れた嗅覚の使い方を教えた犬たちです。
■嗅覚を生かす様々な現場に別々の使役犬がいる!?
犬は嗅覚が優れているのでその特性から様々な目的で使われています。
・警察犬:現場に残された容疑者の痕跡から同じ臭いを追う。
・麻薬犬:空港や港などで海外からの違法薬物を見つけ出す。
・爆薬探査犬:警備が必要な場所に爆薬がないかを探索する。
・トリュフ採取:地中にある高級食材であるトリュフを探索、採取する。
これらの使役犬で共通しているのは、犬が気分に任せて本能的に動くのではなく、人の指示に従って必要な時に作業をすることです。
それができなければ使役犬とは呼べません。例えばトリュフを探すには豚の方が向いているらしいのですが、本能的に探し食べてしまいます。その点、犬はここにあると告知をしてくれるだけですが、犬は訓練に時間を要するため豚を使う人も多くいるらしいということです。
日本には遺体捜索犬は存在していませんし、育成もできません。何故ならば教える時に必要な同じ臭いが法的に揃えられないからです。
■犬は純粋で単純な動物!
同じ嗅覚を使うのに、なぜ別々に作業犬がいるのでしょうか。
犬は正義感、責任感があって作業をしているのでしょうか。
犬は純粋な生き物です。裏切ることもありません。もし思うように動かないときは、教えていないことや経験不足なことをやらせているときであると指導手自らが反省すべきことです。
教えたことはキッチリとしてくれますが、犬が状況判断したり、現況を忖度して動いているのではありません。一生懸命作業をするのは、ご褒美がもらえる、褒めてもらえるなどの対価を期待してのことで、私たちは真剣勝負でも犬にとってはゲーム感覚です。
この犬が持っている純粋さ単純さを生かし、訓練ではギブ&テイクで教えていきます。その関係の中でこの人(指導手)に従えば良いことがあると犬からの信頼が生まれ、指示に従い動くようになっていきます。犬は教えたこと、訓練したことしかできない動物なので、一つのことに絞って成功させて褒めて育成する必要があります。一頭で今日は災害救助、明日は麻薬探索などと人間の都合で器用に切り替えはできません。
■実働における作業犬の在り方!
この作業犬への考え方、手法は世界的にほぼ差異はありません。ということから、生きている要救助者を探す災害救助犬ならば遺体捜索はできないというのは関係者なら共通の認識のはずです。ただ様々な臭いに反応を示すことはあるかも知れませんが、「反応が…」とは云っても、何に対しての反応かということを明確に示すことはできないはずですし、犬の行動を正しく分析できない現実から、仮に反応!といった地点を掘り返せば現場は穴だらけなり無駄になることは想像がつきます。これでは現場作業の邪魔をしていることになり、災害救助犬活用への逆効果となることを懸念しています。また「出動しました」だけでは自画自賛のパフォーマンスしているだけに過ぎないのではないでしょうか。
災害の度に災害救助犬という名称が故に、災害現場で絶対的に役立つと考えるのは早計です。役立てる環境、必要な状況、場面を見極めて然るべきです。その限定された目的(生存者を探す)のために補完的な立場にある災害救助犬でもあります。
また、偶然、ひょっとしたらの思いで現場で使うならば、わざわざ訓練をする必要もなく、家庭犬でもできることになります。
教えられてもいないこと、やったことがないことをやらされている犬は哀れで同情を禁じえません。
こうした災害救助犬への現況、理解が、現場を指揮する人々に周知されず、効果的な活用がなされているとは到底思えません。先進国からは災害大国日本で救助犬を活用できない不思議!と揶揄されていることは真摯に受け取るべきことでしょう。
人命救助のための災害救助犬の効果的な活用を考えず、情緒的、無節操な状態になってはいないか、当事者、関係者は冷静に考えていただければと願っています。
DRDNでは来月から専門誌に災害救助犬に関する連載を1年間します。